弁護士生活40年の経験と知識を活かして相続問題を解決。家庭裁判所調停委員の実績が強み
兵庫県神戸市「神戸きらめき法律事務所」の村上公一弁護士(兵庫県弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。弁護士生活40年の豊富な経験を持ち、家庭裁判所調停委員としての経験を活かした解決を得意とされています。相続案件における依頼者との接し方や弁護士に相談することのメリットについても詳しく聞きました。
インタビュー
所属する弁護士が知性を光らせてきらめく解決を提供
事務所設立の経緯を教えてください。
1984年に弁護士登録をして、神戸市内の法律事務所に就職しました。そこで5年間勤務した後、1989年に「村上法律事務所」を開設しました。当時は3〜5年目で独立する弁護士が多く、自分の事務所を開設しようと思ったのも自然な流れからでした。
2014年には、新たな展開として事務所名を「きらめき法律事務所」に変更し、経営形態も複数の弁護士による共同運営方式に改めました。現在は私を含めて4名の弁護士が在籍しています。
「きらめき」という事務所名には、「光り輝く事務所でありたい」という思いが込められています。大きな事務所ではありませんが、所属する弁護士一人ひとりが知性を光らせ、懸命に努力し、皆さまの身近な相談相手となるよう日々精進しています。
事務所の理念を教えてください。
「研究をゆるがせにしないこと」です。レベルの高い仕事をすることに強くこだわっており、間に合わせの仕事は決してしません。どんな案件でも、しっかりと研究を重ね、深い学識を持って進めていくことを心がけています。
この理念は、私が弁護士になった頃から大切にしてきたものです。最初に勤めた事務所の先輩弁護士から言われた言葉が、今でも心に残っています。「書式集を買うな。自分で考えろ」と。
表面的な対応や小手先の技術では、本当の意味での実力にはなりません。マニュアルや既製の書式に頼るのではなく、自分の頭で考え抜くことが大切だということを伝えたかったのだと思います。
法律問題は一つとして同じものはありません。だからこそ、私たちは研究を怠らず、真摯な姿勢で皆さまの問題に向き合い続けています。
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
相続案件は、相続法はもちろんのこと、租税法や不動産登記など、幅広い知識が求められます。そのような複雑な問題を解決することが、私にとって大きなやりがいとなっています。
また、2014年から10年間、神戸家庭裁判所の家事調停委員を務め、相続分野への関心がさらに深まりました。家事調停委員の職務を通じて得た知識は、教科書的なものではありません。実務を通じて培った、「肉体的な感覚」とでもいうべきものです。
裁判所が相続案件をどのように捉えて、どのような情報を重視しているのか、裁判所視点で案件を見る力を身につけられたことは、大いに役立っています。
劣勢に立たされた相続人をサポートするためのノウハウ
相続案件ではどのような相談が寄せられますか。
多数多様な相談が寄せられますが、特に多いのは「不利益な遺言を残された」や「不利益な生前贈与をされた」という内容です。つまり、他の相続人が優遇され、自分は冷遇されたと感じて相談に訪れるケースが目立ちます。
このような案件で共通するのは、優遇されている相続人は被相続人との距離が近く、財産に関する資料や情報を持っているということです。そのため、劣勢に立たされた依頼者のために取るべき行動は、情報を集めることになります。
被相続人の遺言能力を調べるために病院や介護施設で健康状態を確認したり、財産状況を把握するために銀行の取引情報を調べたり、これらの調査は依頼者の権利を守るために非常に重要なステップです。
私は長年相続案件に携わり、劣勢に立たされた相続人がどのように対応すればよいかについて、研究と実践を重ねてきました。特定の情報を得るためにはどこに問い合わせればよいかといった独自のノウハウを蓄積し、依頼者に最適なサポートを提供するために役立てています。
相続案件を扱う際はどのようなことを心がけていますか。
関連分野の知識をおろそかにしないことです。弁護士の中には、「税金は税理士の分野」「不動産登記は司法書士の分野」といった線引きをして、自分では勉強しないという方もいますが、それでは十分なサポートができません。
遺産分割協議書を一つ作成する際にも、税金がどのように影響するかを考慮しなければなりません。不動産に関しては固定資産税が発生し、それを誰がどう支払うかという問題も出てきます。このように、相続案件では法律だけでなく、税金や不動産に関する知識も不可欠です。私はこれらの関連分野の知識をしっかりと持ち、全体を見渡して対応することを心がけています。
もう一つ大切にしているのは、依頼者とのコミュニケーションです。面談の機会を重視し、依頼者の意向をしっかりと聞くようにしています。弁護士が先入観や推測で判断したり、「この事件はこう解決すべきだ」と勝手に筋道を描いてしまうことは避けるべきです。依頼者が何を望んでいるのかを理解し、その意向を尊重しながら解決策を探ることが重要です。
依頼者の中には、自身の権利について誤解している方もいます。そのような場合は、面談の中で丁寧にレクチャーすることが私の役目だと考えています。一般の方が法律に詳しくないのは当然のことです。ホワイトボードに図や言葉を書きながら、基礎的な知識も含めてわかりやすく説明することを心がけています。
依頼者とのコミュニケーションにおいて意識していることはありますか。
特に意識しているのは「つかず離れず」という距離感です。依頼者の感情面を無視するのは良くありませんが、相手方に対する不満や復讐心をぶつける場として弁護士を利用するのも適切ではないことを説明する必要があります。
相続問題は、「人生の総決算」のように考える依頼者が多いと感じています。例えば、「兄は大学に行かせてもらえたのに、自分は行かせてもらえなかった」というような、過去の不満を調停の場でぶつけようとする方もいます。しかし、相続は法律に従って財産を分割する手続です。過去の感情問題を全て解決することは、残念ながらできないのです。
だからといって、冷淡に突き放すことが良いわけではありません。依頼者の思いを可能な範囲で書面に反映させるなどの配慮が必要です。依頼者との距離感は、弁護士にとって非常に重要なキーワードです。依頼者と近づきすぎず、また離れすぎないというバランスを保つことが求められます。
この距離感は、教科書が教えてくれるものではありませんし、どんなに経験を積んでも正解に到達することはありません。日々反省し、試行錯誤を重ねながら、より良い対応を模索し続けています。
専門知識と人間性の両面からアプローチ
相続問題を弁護士に相談するメリットはどのようなことがありますか。
まず、「問題」と「紛争」は違うということを知っていただきたいです。相続問題は、多くの方々にとって避けられない課題です。遺産を巡る紛争が発生するかどうかにかかわらず、相続に関する問題は必ず発生します。
例えば、被相続人の銀行預金をどのように解約すれば良いのか、保険の手続はどう進めるべきか、不動産や自宅の土地・建物の名義変更はどうすればよいのかといった問題が次々と出てきます。これらの問題について、正しい知識を得ることは非常に重要です。そして、正しい知識を持つことが、紛争を避けることにつながります。
よくあるケースとして、一部の相続人がきちんとした説明もなしに手続を進めてしまうことがあります。このとき、よく精査せずに遺産分割協議書に署名押印してしまうと、後から問題に気づいたとしても、取り消すことが難しくなります。
相続問題では初動が非常に重要です。相続問題に直面した際には、まず弁護士に相談して、適切なアドバイスを受けることが、最良の結果を得るための第一歩となります。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
税理士や司法書士といった関連分野の専門家と密接に連携していることです。これにより、必要なときにはいつでも相談や依頼ができる体制が整っています。また、私自身も幅広い分野でしっかりと勉強し、豊富な知識と経験を積んできましたので、依頼者の方々が納得のいくサービスを提供できると自負しています。
また、相続問題を解決するには、知識だけでなく「人間的な情」も欠かせません。困っている人や悲しんでいる人との関係において、どのように対応すべきかという点で、弁護士の人間性が問われることが多々あります。法律的な解決だけでなく、依頼者の心の負担を少しでも軽くすることを常に心がけています。
このように、専門知識と人間性の両面からのアプローチにより、多くの方から「相談してよかった」「気持ちが楽になった」といった声をいただいています。
これまでの活動で印象に残ってる案件やエピソードを教えてください。
印象に残っている案件の一つに、遺言の有効性を争った案件があります。1審では遺言が無効と判断されたのですが、2審から私が代理人を引き受けた結果、逆転勝訴を勝ち取ることができたのです。
この案件は、母親が残した遺言書を巡る兄妹間の争いでした。遺言の内容が妹側に有利であったため、兄が「遺言は無効である」と訴えたのです。
1審では、「遺言は妹が母親に無理やり書かせたものである」と、無効の判決がくだされていました。しかし、私はこの判決に対して疑問を持ちました。民法には、遺言が無効になる理由として意思能力の欠如や詐欺、脅迫といった条件が明示されていますが、強く迫られたからといって無効になるとは書かれていないのです。
そこで、私は「遺言能力」に焦点を当て、徹底的に調査を行いました。遺言能力とは、遺言を残す際にその人が意思能力を持っているかどうかを問うものです。判例を詳しく調べ、議論を重ねた結果、2審では遺言能力があったことが認められ、無効とされた遺言書が有効であると判断されたのです。
法律の解釈とその適用の難しさ、そして正確な知識に基づく対応がいかに重要であるかを再認識させられました。依頼者からはたいへん感謝され、私自身も弁護士としての責務を全うできた喜びが大きい案件でした。
最後に、相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
最も大切なことは、一人で悩まないことです。相続問題は複雑で感情的な側面も絡むため、一人で抱え込むのは非常に苦しいものです。どんなに小さな不安や疑問でも構いません。ぜひ、専門家に相談してください。
私たち弁護士は、皆さまが思っているほど敷居の高い存在ではありません。むしろ、皆さまの味方として、問題解決のお手伝いをさせていただくのが私たちの役割です。相談に来られる方々が少しでもリラックスして話せるよう、常に心がけています。まずは気軽にご相談ください。