長いキャリアで得た知見を元に解決への的確な道筋を描く。寄与分や遺留分が絡む困難な事案にも対応
東京都新宿区で「笠井・金田法律事務所」を経営する笠井 收弁護士(第二東京弁護士会所属)に、事務所の理念や、相続のトラブルを解決する上で心がけていることなどを伺いました。1978年からキャリアを重ねてきた笠井弁護士。豊富な知識と経験を活かし、依頼者にとって最大限利益がある結果を導くために尽力されています。一般にハードルが高いと言われる寄与分が認められた事例についても、詳しくお話しいただきました。
インタビュー
事案の趣旨を見極め、的確な見通しを提示
先生のキャリアについて教えてください。
1978年に弁護士登録し、勤務弁護士として経験を積んだ後、39歳のときに同期の弁護士と2人で事務所を立ち上げました。その後、1993年に現在の事務所を設立しました。以来30年以上にわたり、新宿の地に根ざした法律事務所として、依頼者から寄せられる様々な相談に対応しています。
事務所の理念や、普段から業務において大切にしていることを教えてください。
1つは、的確な見通しを伝えることです。依頼者の話をじっくり聞いて事案の趣旨を理解し、今後どのような展開が予想されるかを丁寧に説明します。
もう1つはスピードです。法的な手続きの中には期限が決まっているものがあります。こちらの対応が遅れると手続きができず、依頼者が不利益を被る可能性があります。万が一にもそのようなことがないよう、スケジュール管理を徹底してスピーディーに業務をおこなっています。
弁護士の使命は、依頼者にとって有利な結果を出すことに尽きると考えています。「依頼してよかった」と思ってもらえるよう、これまで培った知識と経験を駆使して、1つひとつの案件に取り組んでいます。
調停も活用し、最善の解決を目指す
相続について、どういったご相談が多いですか。
一番多いのは、遺産分割の話合いがまとまらないという相談です。遺留分や寄与分に関する相談も多数寄せられます。また、財産をお持ちの方自身やそのご家族が、相続に備えたいということで遺言作成の相談に来ることもよくあります。
遺産分割のトラブルについて相談を受けた場合、解決のためにどのように対応するのですか。
遺言が残されていれば原則として遺言の内容に従って遺産を分けます。遺言がない場合、誰がどのくらいの遺産を相続するかは法律のルールに従って決まります。しかし、相続に関する法律上のルールを知らないまま、自分たちの感覚や地域の慣習などを元に取り分を決めようとするケースが少なくありません。
感情に任せて各々が好き勝手に主張していては、いつまで経ってもゴールに辿りつけません。そこで、法律の専門家としての立場で当事者の間に入り、法律のルールに基づいて遺産分割の話合いを進めていきます。「日本の法律では、各相続人に対してこのような割合で遺産を分けます」と冷静に説明をしながら交渉することで、当事者の感情的な対立が落ち着き、スムーズな協議成立を目指せます。
話合いで決着がつかない場合は、裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停では、調停委員が当事者の間に入り、それぞれの主張を踏まえてアドバイスや解決策を提示してくれます。
私は話合いでの解決にはこだわらず、調停を積極的に利用しています。相手方の中には法律のルールに基づかない無茶な要求をしてくる方もいます。「このまま話し合っても平行線をたどるだけだな」と判断した場合は、依頼者に対して調停の利用を提案することがよくあります。
調停は解決までに時間がかかるイメージがあるかもしれませんが、中立的な立場の調停委員が間に入ることで、双方が納得しやすいように話を進めてくれますし、解決案の内容も妥当です。もちろんケースバイケースではありますが、話合いを続けるよりも、結果的にいい解決につながることが少なくないと考えています。
寄与分については、どのような相談が多いですか。
「長年、被相続人の介護をしてきたのに、取り分が少なくて納得できない」という相談が多く寄せられます。
そもそも寄与分とは、生前の被相続人に対して、介護や仕送りなどの特別な貢献をした相続人の相続分を増やす仕組みです。ただ、寄与分が認められるハードルは高く、調停や審判で寄与分を主張しても、裁判所からは厳しい判断をされる傾向があります。認められたとしても、大幅な増額は期待できないケースが少なくありません。
「これだけ尽くしてきたのだから、相続分を増やしてほしい」という依頼者の気持ちはよくわかります。思いを受け止めた上で、なぜ寄与分の主張が認められにくいのか、過去の事例も示しながら理由を説明して依頼者の理解を得ます。そして、「希望通りの金額は認められないかもしれませんが、1円でも多く上乗せできるよう一緒に頑張りましょう」と伝えて、依頼者の苦労が報われるよう粘り強く交渉していきます。
努力が実を結び、破格の寄与分が認められた事例も
初回相談の流れを教えてください。
まずは依頼者の話を丁寧に聞き、状況を整理して争点を明らかにします。法定相続分の問題なのか、それとも寄与分や遺留分をめぐる問題なのか…事案の特徴を踏まえて適切な解決方法と見通しを説明します。お手元に戸籍謄本や遺言などの資料があれば、ぜひご持参ください。
弁護士費用がいくらかかるかを気にされる方が多いので、初回相談時に総額費用の概算を提示しています。
納得していただけるまでじっくり話し合うことを大切にしているので、私の方針や費用などについて少しでも疑問があれば何でも質問していただければと思います。
印象に残っている案件をお聞かせ下さい。
寄与分に関する案件で、よく覚えているものがあります。依頼者は地方の実家で、10年以上にわたって両親の介護をしてきた女性でした。東京に住むお姉さんがいたのですが、介護にはほとんど協力せず、たまに顔を見せたかと思えば観光地をまわって何の手伝いもせずに帰るような有様だったそうです。
依頼者は相続が発生したタイミングで私のもとに相談に来て、「姉に対して寄与分を主張したい。そうしなければ私の努力が報われない」と思いを吐露しました。たった1人で介護の負担を背負ってきた依頼者の力になりたいと思い、受任することを決めました。
ただ、交渉は難航しました。こちらが提示した金額に対して、相手方からは「高額すぎる。判例では相続財産の3%から5%が相場だ」と反論され、なかなか応じてもらえませんでした。それでも粘り強く交渉を続けて、最終的には、寄与分は相続財産の17%、残りは法定相続分のルールに従って分割することで合意しました。
寄与分はただでさえ認められにくいところ、17%という、相場を大きく上回る破格の数字で合意できたことは今でも忘れ難いです。調停の段階で終結したので、依頼者に極力負担をかけずに早期解決を実現することができました。
トラブル解決も予防も、相談はお早めに
相続について弁護士への相談を検討している方へのメッセージをお願いします。
相続の問題は、当事者で話し合ってもなかなか折り合いがつかないことが多いです。無理にご自身で解決しようとせず、火種が小さいうちに弁護士にご相談ください。ヒートアップして収拾がつかなくなってしまうと、弁護士が入っても解決までに時間がかかる可能性があります。
また、相続発生後のトラブルを避けるために最も有効な対策は遺言です。当事務所では、財産をお持ちの方ご自身やそのご家族から、遺言作成の依頼を多く承っています。遺言があれば、基本的に相続人は遺言の内容通りに遺産を分け合うことになるので、遺産分割の話合いをする必要がありません。話合いの手間が省けて相続人の負担が軽くなりますし、各々が自分の利益を主張して議論が紛糾する事態も回避できます。
「自分はまだまだ元気だから、遺言を作るのは当分先でいいだろう」と思う方も多いでしょう。しかし、人間はいつ亡くなるかわかりません。私自身、昨日までお元気だった先輩の弁護士が急病であっという間に亡くなられて、明日は何が起こるかわからないと痛感しました。私ももう80歳に近い年齢ですから、すでに遺言は作成しています。
トラブルの解決も予防も、早く行動を起こすに越したことはありません。皆様の悩みに寄り添い、最善の解決策を提案させていただきます。お気軽にご相談ください。