躊躇せず労力の多い問題にも取り組む〜依頼者の声を代弁し、伝え続けることこそ弁護士の使命
神奈川県横浜市中区に「横浜弁天通法律事務所」を構える高井英城弁護士(神奈川県弁護士会所属)に、事務所として大切にしている理念、相続案件に向き合うにあたっての心構えなどを聞きました。「声を上げられない人たちの代弁者となる」という思いで活動する高井弁護士。悩みに寄り添う姿勢を大切にしています。
インタビュー
可能な限り悩みに寄り添い声を伝える
事務所設立の経緯について教えてください。
自分が小さい頃からたくさんの人に助けられてきたので、「自分も人を助ける存在になりたい」「困った人のために仕事をしたい」と考えたのが弁護士を志した理由です。
2008年に前の事務所に入所しましたが、企業の顧問弁護士などの仕事が多く、個人の方との関わりはなかなか持てませんでした。10年間働いたことを機に独立し、より個人の方に寄り添う事務所として、2019年1月に弁天通法律事務所を設立しました。
関内駅に近いこの場所は、裁判所に近く、税理士や不動産鑑定士など他の士業の方とも協力できる環境が整っています。
事務所の理念や、大切にしていることはありますか。
日々、いろんな悩みを抱えてこられる方がたくさんいらっしゃいます。その悩み一つひとつに対し、「法律がこうだから」と画一的な対応をするのではなく、その案件の個別事情に真摯に向き合い、できるだけ悩みに寄り添っていきたいと考えています。
当事務所には、「依頼成功の確率が低い」や「労力が大きいわりに得られるものが少ない」などの理由で、他の事務所で依頼を断られた方が相談に来ることも多いです。
その方達は当事務所が引き受けないと、もう声を上げる場所がなくなってしまいます。声を上げることによって、依頼者の気持ちが落ち着くことも、新しい展開になることもあります。
まずは依頼者の声を、法律的根拠にのっとった形で代弁してあげることこそが重要だと考えています。そのため、成功確率や労力の多寡等は考えずに、法律的根拠があるかという点に重点を置き、引き受けられるかを検討するようにしています。
「寄与分」の主張もお任せください
相続案件に注力している理由を教えてください。
相続はとても身近な問題ですが、発生するまで何も対策していない方がほとんどです。単にお金の問題ではなく、それまでの親子間、兄弟間の関係で争いが起きていることが大半です。
相談に至る過程は依頼者ごとに違いますし、それぞれ色々な思いを抱えています。
単に「法定相続分がこうだから」と画一的に進めるのではなく、依頼者の気持ちに寄り添いたいと考えています。
弁護士として依頼者の抱いている思いを代弁してあげて、なるべく実態に沿った解決を目指しています。
相続に関して、どういった相談が多いですか。
被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度のことを「寄与分」といいますが、ここに関わる対立は多いです。
親の介護を行ってきた側は「自分が親の面倒を見てきたのに、なぜ最後だけ平等に分けなければいけないのか」と相談に来られます。
また、寄与分を主張された側から「何もしていないのに、『自分がやった』とうそをついているのが許せない」と相談される場合もあります。
寄与分が認められるハードルは高いと聞きます。
寄与分が認められるには労力がかかる上、なかなか裁判所が「寄与分を認めることが公平になる」と理解してくれません。
裁判所の審判まで行くと基本的に法定相続分で分けろという判断が出ることがほとんどのため、「寄与分を主張しても無駄」という考えで案件自体を受けない事務所も多いそうです。
こういった現状だと、高齢の親を持つ方が「介護をしてもしなくても貰えるものが同じなら、介護はやりたくない」という判断になってしまいます。
今後高齢化が進み、老老介護などもさらに増えていく中で、寄与分について声を上げ続けることは、今後の介護問題の解決にもつながっていくと考えています。
寄与分は正当に請求できる権利です。私はなるべく請求をすることによって、裁判所に「そもそも寄与分を認めることが公平な場合がある」と知らせ、裁判所の意識を変えていきたい、というぐらいの気概で取り組んでいます。
弁護士が依頼を受けないと、裁判所に声を伝えられない方は本当にたくさんいらっしゃいます。裁判所にこの問題があると、常日頃から知ってもらうようにする。それが弁護士の使命でもあると思っています。
寄与分を認めてもらうために、どういったアプローチをされていますか。
まず、依頼者には、「寄与分は認められにくいですが、主張したければ主張していきます」と話します。その上で、依頼者が何をして、どれぐらい時間をかけていたのか詳しくヒアリングします。
具体的にプロのヘルパーを頼んだ際の報酬に換算するなど数値化して、裁判所にわかりやすく伝えていきます。
弁護士が初めから「できません」と言って何の主張もしないのと、主張した上で判断が出るのでは依頼者の納得感がまったく異なります。
私が担当した案件では、主張したものについては何らかの形で考慮してもらったことがほとんどです。
費用をかけても専門家に依頼するメリットは大きい
相続について、弁護士に相談するメリットを教えてください。
個人で相続問題に取り組んでいこうとすると、感情が優先してしまい、情報が正しく裁判所に伝わらないことが多いです。
主張の仕方やポイントは事例によって異なります。法律的観点を抑えていないと裁判所に対して問題点や主張が伝わりません。弁護士に依頼することで客観的に問題点を見て主張を整理することができます。
また、相続を行うときには「遺産の範囲を確定すること」「財産の時価を確定すること」が必要です。これはかなり専門性が高いことなので、ぜひ専門家に頼んでいただきたいですね。正しく財産を評価することで、適切な範囲で、適切な価格での交渉が可能になります。
弁護士費用をかけても専門家に依頼した方が、自らの気持ちを正しく代弁してもらえて、遺産分割の際にも受け取れる遺産が増えたりなど、メリットを感じていただけると思います。
事務所ならではの強み、他の事務所との違いを教えてください。
当事務所では離婚案件などでも不動産の評価について扱うことが多いため、無料で評価してもらえる業者を複数抱えており、依頼者の負担感なく適切な評価が可能です。
税理士、司法書士とも連携しているため、相続税の申告、登記の書き換えなど基本的に相続に関わることはワンストップで行えます。
しかし1番の強みは、寄与分を請求したいなど、思いを持っている方の依頼に躊躇せずに取り組むことだと考えています。
「人の気持ちを代弁する」ことは私にとって当然のことだと思っていましたが、他事務所の方や依頼者からの話を聞くと、これが他の事務所とは違う強みなのかなと考えるようになりました。
当事務所への依頼者は「他の事務所に断られた」と2番目、3番目で来る方が多く、解決策を提案していくと「他の事務所では全然違うことを言われました」と驚かれることも多いです。
これから相談、依頼を検討している方へのメッセージをお願いします。
親族間の争いは、これまでの積み重ねがあった上での問題になっていることもあります。これまでの関係の中で、ただ平等に分けるのが納得できないということであれば、言いたいことを主張して解決した方がいいと考えています。その気持ちの代弁をするお手伝いをしたいと常に思っています。
また、労力のかかる案件にも多数取り組んできたことから、他の先生方とは違う経験値を持っていると自負しています。困っている方ほどぜひ相談していただきたいなと考えています。