依頼者の事情を丁寧に聞き取り、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの解決策を提案
兵庫県神戸市中央区東町で「弁護士法人らい麦法律事務所」を経営する池本直記弁護士(兵庫県弁護士会所属)に、事務所の理念や、注力している相続案件に携わる上で心がけていることなどを聞きました。相続案件では証拠の少ないケースが多く、弁護士の知識と経験が大きな差に繋がると語る池本弁護士。相続について弁護士に相談・依頼するメリットについても詳しく聞きました。
インタビュー
信頼できるロースクールの同期と事務所を共同設立
事務所設立の経緯を教えてください。
私はもともと大阪の老舗の法律事務所で、企業法務を主に手がけていました。数年間そこで経験を積む中で、大きな企業法務の事件よりも、目の前の依頼者の力になれるような事件に取り組む方が、自分の力を発揮でき、よりやりがいを感じるのではないかと考えるようになりました。そのため、独立して、個人の事件を扱う事務所を構えたいと思うようになりました。
事務所を一緒に立ち上げた阪口亮弁護士はロースクールの同期で、一緒に勉強会や自主ゼミを組んで学び、プライベートでも飲みに行く仲でした。独立を考えていたとき、久しぶりに再会し、将来の展望について意気投合しました。彼は学生時代からとても優秀で、人柄も柔らかく、信頼できるパートナーとして事務所を経営していけると確信しました。こうして、一緒に事務所を設立することになったのです。
「弁護士法人らい麦法律事務所」という事務所名の由来を教えてください。
私が好きな小説「ライ麦畑でつかまえて」に由来しています。ロースクールで阪口と仲良くなったときに、この小説を勧めたところ、二人とも共感できる点が多くありました。当時の純粋な気持ちを忘れずに、事務所を続けていきたいという思いを込めて、この名前にしました。
事務所の理念を教えてください。
案件が解決したときに「この事務所に相談してよかった」と思ってもらえるような仕事を心がけています。
大きな事務所が組織として強いとするならば、私たちの事務所は個々の弁護士の強さで勝負している事務所です。定型的な事件処理ではなく、依頼者一人ひとりに合わせたオーダーメイドの事件処理を行っています。案件に徹底的に向き合い、最善の解決を目指します。
そのため、事務所として力になれる案件に絞って受任することを意識しています。弁護士の体力や時間には限りがあるため、本当に力を入れるべき案件に集中するために、分野を限定して受任しています。
専門知識と経験が問われる相続分野を集中的に扱う
相続案件に注力している理由を教えてください。
相続は多くの方が人生で一度は直面する問題であり、需要が多いことが理由の一つです。
相続は多くの法律事務所が扱う分野ですが、実際に携わってみると奥が深いです。関連する裁判例が多数あり、法改正も行われています。また、税務や登記実務とも関わりがあり、研鑽を深めようとするとどこまでも学び続けられる分野です。
また、相続に関する情報はインターネット上に多くありますが、実際には法改正で変更された部分が多く、裁判実務を詳しく知らないとうまく対処できないケースが多いです。
このように、相続問題の解決には多くの知識と経験が要求されます。弁護士として、悩んでいる方のお役に立てると考え、注力しています。当事務所では相続分野を集中的に取り扱い、深い知識と経験を日々積み重ねることで、依頼者によりよい結果を提供できるよう努めています。
相続について、よくある相談内容を教えてください。
遺産分割に関するもの、特に不動産の分け方に関する争いが多いです。経済的価値が大きいことや、価値が一律に決まっていないことから、誰が取得するのか、いくらで取得するのかについて相続人間で意見が対立しやすい傾向にあります。
また、遺産の内容が全くわからないという相談もあります。相続人の一部が遺産を管理していて、他の相続人が遺産の内容を把握できないケースなどです。この場合、遺産の捜索からお手伝いすることになります。
具体的には、銀行から口座の入出金明細を取得し、過去の入出金を調べますが、それだけで全てが判明するわけではありません。そこから先はケースバイケースで、弁護士としての経験に基づいて遺産がどこにあるのかを予測し、関係機関に問い合わせる作業を繰り返します。
他に多いのは、遺産の使い込みに関する相談です。遺産が全く残っておらず、取引履歴を確認すると不審な出金が多数見つかるケースがあります。この場合、使い込みがあったのかの水掛け論を避けるために、引き出しを行った人物や、それが被相続人のためでないことなどを、細かい事実や証拠を積み上げて立証していく作業が必要です。
当時の被相続人の認知能力を立証するために、被相続人の医療記録を取り寄せることもあり、事件記録が膨大になることも珍しくありません。
最近の相談の特徴や傾向があれば教えてください。
依頼者がインターネットで事前に調べ、ある程度の知識を持った上で相談に来るケースが増えていると感じます。私が弁護士になった頃は、インターネット上にそれほど情報がなかったので、大きな変化だと思います。
また、この数年で大きな法改正があったため、現在の法律に基づいてアドバイスをしなければならないという点も変化の一つです。
私が弁護士になった頃は大阪で活動していましたが、現在は事務所がある神戸の方から主に相談を受けているため、地域による違いも感じています。特に、処理の難しい不動産に関する相談は、神戸に来てからより多く受けるようになりました。農地や、活用が難しい田舎の不動産に関する相談が増えていると感じます。
また、経験を重ねるにつれて、遺産の金額が大きい案件の相談も増えました。新人弁護士の頃とは異なり、案件の規模や深刻度が増していると感じています。
依頼者の背景事情を丁寧に聞き取り、法的に有利な主張を提案
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
相続問題は、家族間の長年の感情や関係性がこじれることによって、複雑になることがあります。そのため、法的解決に必要な事実だけでなく、そこに至るまでの背景や依頼者の思いをなるべく聞き取るように心がけています。
依頼者の話を聞くと、法的にはシンプルな問題なのに、なぜこんなに揉めるのか不思議に思うことがあります。より詳しく聞いていくと、兄弟の仲が昔から悪かったことや、両親の一方と疎遠だったことなど、様々な背景事情があることがわかります。こうした背景を把握することで、争いの原因や理由を理解することができます。
ただし、依頼者の考えと、法的に有利な主張が必ずしも一致しない場合もあります。そのような場合には、依頼者の背景事情を踏まえながら、法的に有利になる見方を根拠とともに提示することが、弁護士として大事な役割だと考えています。
相続について弁護士に依頼するメリットを教えてください。
依頼者にとって最善の解決が期待できることはもちろんですが、一番のメリットは依頼者がストレスから解放されることです。
一般の方にとって、人と争うことはただでさえストレスフルなことですが、身内との争いはさらにストレスが増します。弁護士に依頼することで、このようなストレスから解放され、肩の荷を下ろすことができます。
また、親族間の問題では、相手になかなか本音を言えない場合もあります。そのような場合でも、弁護士が依頼者の本音を聞き取り、法的な観点から論理的に主張を展開することができます。
弁護士に依頼することでストレスから解放されつつ、適切な主張を行うことができるのが、大きなメリットです。
もっと早く相談に来てほしかったと思うケースはありますか。
親との仲がよく、親の遺産に関する希望を把握していたにもかかわらず、遺言書の作成などの相続対策を行わなかったために、親が亡くなった後に問題が生じたケースがよくあります。
もし生前に弁護士に相談して対策を講じていれば、争いを回避できた可能性が高かったでしょう。そのようなケースでは早めに相談に来てほしかったと強く思います。
また、時間の経過により証拠が失われてしまったケースもあります。例えば、相続人の一部による遺産の使い込みが疑われる場合には、銀行の取引履歴だけでなく、領収書やレシートなどの細かな資料が残っているうちに、早めに相談してほしいと思います。
時間が経過すると、時効により権利が主張できなくなるケースもあります。そういう意味でも、早めに相談することが大切です。
相談するタイミングによって、相談料が変わることは基本的にありません。もし争いになる可能性があると感じた場合には、自分で解決しようとせずに、早めにご相談ください。
親族だからこそ言いづらいことは、一人で抱え込まず弁護士にご相談ください
相続案件に携わる中で、やりがいを感じるのはどのようなときですか。
相続は家庭内の問題なので、他の分野に比べて証拠が少ないことが多い分野です。証拠が少ない場面でも、これまでの経験に基づいて「この場所にはこのような資料があるかもしれない」と予測し、実際に調査してみて予測が当たったときにやりがいを感じます。
相続分野は経験が重要なので、経験を積むほどに、より深い知識を得て、解決能力も向上していくことを実感しています。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
これまで、依頼者が「もう少し早く相談すればよかった」と悔しい思いをするケースを多く見てきました。まずは早めにご相談ください。
「自分の悩みは弁護士に相談すべきことなのだろうか」と思うような内容でも、弁護士に依頼すべきかどうかも含めてアドバイスいたします。当事者で解決できそうな案件については、無理に依頼を勧めることはありません。ご自身で進めることを提案する場合もあります。
親族間の問題をわざわざ弁護士に相談するほどではないと思う方もいるかもしれません。しかし、親族間だからこそ言いづらいこともあると思います。まずはお気軽にご相談ください。