事実関係を徹底的に洗い出し、依頼者の主張を的確に裁判所へ伝え、最良の結果を追求
千葉県船橋市前原西で「弁護士法人エース津田沼事務所」を経営する今酒雄一弁護士(千葉県弁護士会所属)に、事務所の理念や、相続案件に携わる上で心がけていることなどを伺いました。今酒弁護士は、遺産分割や遺留分侵害額請求など、調停の場で争うような対立の激しい紛争を多く扱っています。相続争いを法的に解決するためには、事実関係を適切に把握することが大切だと語りました。
インタビュー
津田沼エリアの需要に応えて事務所を開設
弁護士法人エースの津田沼事務所を立ち上げた経緯を教えてください。
弁護士法人エースはもともと東京の銀座に事務所を構えています。さまざまな方からの法律相談を受ける中で、特に千葉県の津田沼周辺の方々からの相談がとても多かったんです。千葉に支店を設立することで、津田沼エリアの方々の利便性を高められると考え、2023年9月に津田沼事務所を立ち上げることとなりました。
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
法律のプロとして、目の前の依頼者のために全力で事件に取り組み、最良の結果を目指すという弁護士業務の基本を徹底することを大切にしています。
もう少し具体的に言うと、依頼者の悩みを法的に解決するためには、事実関係を適切に把握し、その事実に対して適切な法律を当てはめることが必要です。まずは、事実関係を正確に把握するために、依頼者の話をしっかりと聞くことを大切にしています。弁護士がいくら想像力を膨らませたところで事実を確定することはできません。事件のことを最もよく知る依頼者の話をじっくり聞くことを大切にしています。
また、法律を事実に当てはめる際には、その法律構成が本当に最良なのか、他の法律構成で主張することはできないかと検討を尽くします。検討することを通して、依頼者にとってより利益のある法律構成を選択し、最良の結果を得られるように努めています。
法的に難しい論点や、対処が悩ましい案件については、弁護士法人エースの社内ツールを利用して、津田沼事務所以外の弁護士に相談し、意見交換できる仕組みがあります。多角的な視点から案件を検討することで、依頼者にとってよりよい結果を提供できる環境を整えています。
依頼者の話をじっくりと聞き、事実を丁寧に紐解く
相続案件に注力している理由と、よくある相談内容を教えてください。
相続分野の相談や依頼が多いため、自然と力を入れるようになりました。
主な相談内容は、遺産分割や、遺留分侵害額請求、相続放棄などです。
遺産分割の相談でよくあるケースは、遺言書の内容に納得がいかない場合や、特定の相続人による遺産の使い込みなどです。
遺言書の内容に納得がいかないという相談を受けた場合は、まず、遺言書が無効にならないかを検討します。遺言が無効の場合、そもそも遺言は存在しなかったものとして、遺産分割協議をおこなって遺産の分け方を決めることになります。
また、遺言が有効であっても、その内容が遺留分を侵害していることがあります。遺留分とは、一定の範囲の相続人に法律上認められている最低限の遺産の取り分のことです。遺留分を侵害する内容の遺言がある場合は、遺産を多く受け取った相続人に対して、遺留分相当額の金銭を支払うよう請求することも考えられます。
特定の相続人による遺産の使い込みが疑われるケースでは、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求という形で、使い込まれた遺産を返還するよう主張します。遺産の使い込みの案件では、疑われた相続人が否定することが多く、調停や訴訟を提起して争うケースが少なくありません。使い込みが実際にあったのかをお互いに主張立証し合う、本格的な争いになることもあります。
いずれの問題も法的知識が求められるため、弁護士に相談することが重要です。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
依頼者の話や資料などから、事実を丁寧に紐解くことを心がけています。
たとえば、預金が引き出された記録がある場合でも、その預金が生活費に使われたのか、同居の相続人が無断で使い込んだのかは、記録からは明確にはわかりません。そこで、預金の出金日がなぜその日だったのかを考えたり、他のお金の動きと照らし合わせたりして、誰が何のために引き出したのかを、想像力を最大限に働かせて考えるようにしています。
一つの事実でも、見方によっては全く別の解釈ができる可能性もあります。依頼者に有利な見方を主張するために、別の見方を否定できる根拠がないかをさらに検討することもあります。
このような細かな事実の積み重ねで、相続人の使い込みが認められるかどうかが変わり、最終的に得られる遺産の金額に大きな影響を与えます。そのため、事実を紐解く作業に全力を注いでいます。
最近の相談の特徴や傾向があれば教えてください。
最近は本格的な紛争が多い印象です。
私が弁護士になったのは10年ほど前ですが、その頃は相続が発生する前の遺言作成に関する相談がよくありました。また、任意後見という、自身の判断能力が低下した場合に備えてあらかじめ後見人を選ぶ制度が始まって少しした頃だったので、任意後見に関する相談も多くありました。
そのほかに、実際に相続が発生した場合の相談もありましたが、遺言通りに遺産を処理するための手続きに関する相談が多く、遺産争いのような紛争はあまりありませんでした。
しかし、最近はそのようなケースがほとんどなく、むしろ調停を申し立てて、しっかりと争う案件が増えていると感じます。
制度を知っているかどうかで相続できる遺産額が大きく異なる
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
相続には、一般的にはあまり知られていない、さまざまな細かい制度があります。これらの制度を知っているかどうかによって、遺産の取得方法やその金額が大きく異なります。
また、遺産は本来、亡くなった方が生前に、この人にこれだけ残しておきたいという思いが込められた財産です。亡くなった方の思いを実現するためには、適切な形で遺産分割を行う必要があります。
ご自身のためだけでなく、亡くなった方の意思を尊重するという意味でも、一度弁護士に相談するのがよいと思います。
相続には期間制限が設けられている場合もあります。例えば、遺留分侵害額請求では、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年以内に、請求権を行使しなければなりません。期間を過ぎると請求できなくなりますので、できるだけ早く相談することが大切です。
残された資料を紐解いていけば、被相続人の意向や願いにたどり着ける可能性がある
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
ある案件で行った遺産の調査が印象に残っています。依頼者は、亡くなった親と疎遠になっていた時期があり、親の財産がどれほどあるのかまったくわからない状態でした。
私が依頼を受けて、財産を調査してみると、親がかなり大きな財産を残していたことがわかりました。それを知った依頼者は、疎遠だったにもかかわらず親が自分のために財産を残してくれたことにとても驚いていました。また、他の相続人が親の財産を使い込んだ形跡があったこともあり、自分がもっと親の世話をすればよかったという後悔もあるようでした。
相続は、財産の後始末なので、起きてしまったことは仕方がないと割り切って考えるしかありません。しかし、もし親が遺言を残すなどの相続対策を行い、子どものことを思って財産を残しているという事実が依頼者にもっと早く伝われば、もう少し違う親孝行の仕方があったのかもしれません。相続対策と親子のあり方について、考えさせられるものがあった案件でした。
初回の相談の流れを教えてください。
まず、電話やメールで問い合わせていただいた際に、事案の概要やお困りの点をお伺いし、必要に応じて他の事項も質問させていただきます。その後、事務所にお越しいただいて、面談で法律相談を行い、より詳しい状況を伺います。
最初は何を説明したらよいのかわからないかもしれませんが、私の方から必要な情報を引き出すために質問をしますので、どうぞお気軽に問い合わせください。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
ご家族が亡くなり、気持ちの整理がつかない状況にあるかもしれません。亡くなった方が生前に何を考え、何を望んでいたかについて、今となってはわからないこともあるでしょう。
しかし、残された資料や過去の事実を一つ一つ紐解いていけば、最終的には亡くなった方の意向や願いにたどり着ける可能性もあります。
今はつらい状況にあると思いますが、ご相談いただければ前へ進むためのアドバイスをいたします。お気軽にお問い合わせください。