遺産分割協議やお金の使い込み、さまざまな相続トラブルに依頼者の意向を踏まえ柔軟な解決策を提案
1995年に広島市に事務所を開設し、現在広島県内に4か所、東京都に1か所の拠点を構える「山下江法律事務所」。東広島支部(広島県東広島市)で支部長を務める小林幹大弁護士に、相続でよくある相談や弁護士に相談するメリットを聞きました。「相続は専門的な知識が必要な分野です。相続が発生したら、揉めていなくても、方向性やできることについて気軽にお尋ねください」と話します。(広島弁護士会所属)
インタビュー
2017年に東広島支部を新設「広島市まで行かずに相談ができる体制を」
事務所設立の経緯を教えてください。
2017年1月、東広島支部を新設したタイミングで東広島支部長に就任しました。それまでは広島市の1か所で事務所を運営していましたが、誰もが広島市の事務所に簡単にアクセスできるわけではありません。人口が多い地域に支部を出すことで、広島市まで行かなくても自宅の近くで相談ができるような体制を目指しています。
相続案件に注力している理由を教えてください。
日本は高齢化が進んでいますので、相続の問題は発生しやすく、案件の数も多いです。同時に、相続は専門的な知識が必要な分野ですので、何もわからずに知識がないままやってしまうと、間違ったり失敗したりすることもありますので、弁護士としてサポートしていきたいと考えています。
相続についてよくある相談内容を教えてください。
まず多いのは、遺言についての相談です。生前対策として遺言書を作りたいと相談に来られる方もいますが、作成のきっかけは必ずしも相続に関係する相談ではないこともあります。
例えば、土地や建物のトラブルで相談に来られた際に、自分が亡くなった後にどうなるのかを考え始め、遺言書を残しておくこともあります。また、現在所有している不動産を将来的に誰に住ませるのかを考える中で、生前にはっきりさせておくために遺言書を準備するケースもあります。
弁護士が遺言書作成に関与する場合は、必ず遺留分について対策します。誰か一人に財産を残したいと考えていても、兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限保障される遺留分があります。遺留分をめぐって争いになることもありますので、遺言者の意思を尊重しつつも、何も財産をもらえない人が出ないように対策しておくことをお勧めしています。
遺産の分け方のバランスが悪く揉めるケースも多いです。例えば、相続財産で不動産も現金も多ければいいのですが、不動産だけがたくさんあり現金があまりない、さらに、その不動産には既に誰かが住んでいるとなると複雑になります。
住んでいる人を追い出してまで売却するというのは大がかりですし、住んでいる人と揉めることにもなります。こうした場合、不動産が行き渡らない人に生命保険金をかけておくなど、現金で調整することなどが考えられます。
生前に特定の親族や兄弟が遺産を使い込んでしまったというご相談もあります。こうした場合、お金を使った人が使用を認めているのか。また、被相続人の許可を得て使ったのか、勝手に使ったのか。それぞれの事情によって対応は異なります。
銀行口座の取引履歴をみることができますが、引き出したお金をどこで使ったのか立証するのは難しく、裏付け調査は難航することが多いです。こうしたケースでは、遺産分割協議や調停でお金がどこにいったのかを聞いてみるしかありません。
また、気をつけた方がいいのは、その場の流れで、遺産分割協議書を作ってしまい、そのまま印鑑を押してしまうケースです。後から冷静になって自分にとって有利でないことに気づいても、後から覆すことはとても難しいです。遺産分割の方法で疑問に感じたときなどにも、ぜひ弁護士にご相談ください。
ネットで調べた情報、適用されるかどうか弁護士に相談を
最近の相談の特徴や傾向があれば教えてください。
最近、ネットでご自身で調べた上で「こうなんでしょう?」とおっしゃる方がいるのですが、実際には適用されないケースだったということがよくあります。例えば、寄与分や特別受益、生前贈与などです。自分のケースで当てはまるかどうかは、自分で判断せずに、弁護士に聞いていただくのが安心です。
また、認知症の問題は常に出てきます。例えば、「認知症だったから、この時点で贈与や遺言はできるはずがなかった」と贈与や遺言書について争うものです。
これを相続発生後に立証するには、病院を回って、当時の認知状態がどのくらいのものだったのかという証拠を集める必要があります。かかりつけの医者の元にはっきりしたカルテでもない限り、なかなかハードルが高いです。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
依頼者の方はダメ元で依頼したものの交渉がうまくいったような時に、とても感謝されたことが印象に残っています。
例えば、特定の相続人が生前に遺産を使っていたケースでは、裁判となると十分裏付けるための証拠が必要ですので、立証が難しい側面があります。ただ、調停にして話し合いの場に乗せてみると、相手からきちんとした説明が得られ、金銭支払いに了承してもらえることがあります。
これには調停の中で、どのように話の流れを作るのかが重要です。他の話をしている中で、「お金の流れもはっきりさせないといけない」と伝え、資料を出してもらったり使ったお金について説明してもらったりする。話し合いの中で、とっかかりを作る。ここが一番難しいポイントでもありますし、弁護士としての腕の見せ所です。
依頼者からは「知りたいことも知ることができたし、依頼してよかった。弁護士に頼んだ甲斐があった」というお声をいただきました。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
相続案件は感情的な対立も大きく、「あの兄弟に恨みがあるからとにかくこうしてくれ」とおっしゃる方もいますが、感情的になることが必ずしもプラスにならないこともあります。メリットとデメリットどちらも説明した上で、いくつか解決の方向性をご提案することが大切だと考えています。
相続人それぞれが自分の利益を最大限に確保しつつ、今後の親族としての関わりも壊さないように解決するというのが理想ではあります。とにかく自分の言いたいことを主張するだけでは解決しませんし、最終的に裁判官の判断となった際に自分の要求が全部通るのかも難しい面があります。依頼者の利益を確保しつつ、妥当な解決策を探ることを意識しています。
依頼者のお気持ちが強く、自分の気持ちを伝えることを最優先にしたいということであれば、安易に妥協することはせず最後まで徹底的にやることもあります。
広島本部と連携しスピーディな事務手続き
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
相続に関する手続きは、裁判所に紙で出し、紙で受け取らなければいけないものが多くあります。東広島市には簡易裁判所しかないため、広島市内の地方裁判所や家庭裁判所で対応することになりますが、弊事務所は広島市の裁判所の近くに広島本部がありますので、事務手続きをスピーディにおこなうことができます。その日のうちに現物を受け取ることはできなくても、内容だけ共有してもらうこともできます。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続は法的にも難しいですし、実際どういう手続きをするのか知らない人も多いと思います。弁護士に相談するメリットは、見落としていることを教えてもらえるのも一つだと思います。
もちろん、揉めている場合は代理人として紛争解決のお手伝いをしますが、現時点で揉めていなくても、解決や分割の方法について「こういうこともできる」とご説明する場面も多いです。
よく「トラブルが起きていないと相談してはいけない」と勘違いされている方もいるのですが、遺産分割でどういった方向性が良いかなどのご相談もお受けすることが可能です。「こんな話をしていいのかな」と心配する必要はありませんので、一度気軽に話を聞いてみてください。